China Hero Project(チャイナヒーロープロジェクト)をご存じだろうか。

 とても勇壮な響きを持つこのプロジェクトは、中国のゲームクリエイターの支援を目的として、2016年にスタートした、ソニー・インタラクティブエンタテインメント上海(SIE上海)による取り組み。中国の情熱溢れる若者たちを幅広くサポートして、プレイステーション用ゲームを開発してもらおうという、プロジェクトだ。ワールドワイドでの展開を前提としており、中国のクリエイターを世界に羽ばたかせようという、ゲームクリエイターの“チャイナヒーロー”を生み出すという、人材発掘のプロジェクトとなっている。

 China Hero Projectは、2016年に10タイトルがセレクト。2019年には第2期として7タイトルがラインアップされている。記者は2018年のChina Joyに合わせて行われたSIE上海のプレゼンで、China Hero Projectの5タイトルを取材したことがあるのだが、中国人クリエイターのいずれも個性的なタイトルに驚かされた記憶がある。

 China Hero Projectのタイトルとしては、これまでに『ハードコア・メカ』や『フィスト 紅蓮城の闇』などが発売されている。ちょっと驚かされたのが、『ANNO: Mutationem アノー:ミューテーショネム』もChina Hero Projectのタイトルだったこと。『ANNO: Mutationem アノー:ミューテーショネム』といえば、『攻殻機動隊 SAC_2045』のキャラクターデザインを務めるイリヤ・クブシノブ氏がキービジュアルなどを手掛けたことでもおなじみのサイバーパンクアクションアドベンチャー。China Hero Projectは大っぴらには喧伝しないが、着実に浸透しつつあるとの印象だ。

 そんなChina Hero Projectに先日大きな動きがあった。11月22日に中国・成都にてChina Hero Project単独の(!)カンファレンスが行われ、第3期のタイトルを募集することが明らかにされたのだ。イベントには、SIE 社長兼CEOのジム・ライアン氏やインディーズ イニシアチブ代表の吉田修平氏、PlayStation Studios 統括責任者のハーマン・ハルスト氏という錚々たる顔ぶれのビデオメッセージが公開され、China Hero Projectに対する期待値の高さを見せた(各氏のコメントはこの記事の最後に掲載)。

 今後ますます存在感を増すであろうChina Hero Projectに関して、SIE上海プレジデントである江口達雄氏と、China Hero Projectの責任者である包波(バオ・ボ)氏に話を聞いた。

中国のクリエイターが世界に羽ばたく! いまSIEがワールドワイドで注力するChina Hero Projectの見果てぬ夢をキーパーソンに聞く
中国のクリエイターが世界に羽ばたく! いまSIEがワールドワイドで注力するChina Hero Projectの見果てぬ夢をキーパーソンに聞く

江口達雄

ソニー・インタラクティブエンタテインメント上海 プレジデント
(写真左)

包波(バオ・ボ)

ソニー・インタラクティブエンタテインメント上海 China Hero Project責任者
(写真右)

※本記事はプレイステーションの提供でお届けしています。

『原神』の成功が大きな後押しに

――改めてのご質問となりますが、China Hero Projectがどのようなプロジェクトなのか教えてください。

江口China Hero Projectは、6年前にSIE上海がキックオフしたプロジェクトです。要は中国の情熱のあるインディーゲームや中小の開発会社のクリエイターの皆さんに、我々がいろいろな支援を提供して、プレイステーションのゲームを作っていただこうというプロジェクトになります。

 支援というのは、ファンドを紹介するといった資金面だけのお話ではなくて、エピックゲームズさんといっしょにUnreal Engineを無料でお貸し出ししたり、日本の企業のデジタルハーツさんと協力して、QAサービスを無料で提供したりといった技術サポートも含まれます。

 若いチームだと、アイデアや情熱があっても、お金と技術がないというところが往々にしてあります。それを我々が支援することによって、家庭用ゲーム機向けのタイトルをいっしょに作っていきましょうというのが、6年前のスタートでした。

――インディーゲームクリエイターはもちろんのこと、中小のデベロッパーも幅広く対象にしているのですね。

江口そうですね。第1期はほぼインディーゲームクリエイターさんが多かったのですが、徐々にChina Hero Projectの主旨に賛同してくださる中小の会社がジョインしてくれるようになりました。先日募集を開始した第3期では、これまでと主旨を変えて、会社の規模は問わないようにしました。大きな規模の会社であっても、“ソニーといっしょに海外で勝負をしたいというチームがあれば、いっしょにやりましょう!”ということですね。

――中小のデベロッパーも、China Hero Projectに注目しているということですね。

江口中小デベロッパーには、高い技術を持つところもありますし、当初は“China Hero Projectに頼らなくても自分たちでできる”という意識があったかと思います。それが、China Hero Projectを6年間続けるうちに、技術や金銭面のサポートに留まらず、“ソニーがいっしょになって広告展開をしてくれる”とか、“海外ユーザーのテイストを教えてくれる”といった、いわゆるガイド役として評価されていった部分はあります。

 あと、結果的に大きかったのが『原神』の世界での成功ですよね。

――『原神』ですか?

江口『原神』はChina Hero Projectではないのですが、開発当初から我々SIE上海がmiHoyoと協力しながらコンソールゲームを作り上げたんですね。彼らはPCやモバイルに対しては強いのですが、コンソールへの対応の仕方はそこまで詳しくなかったんです。

――なるほど。

江口それが、いっしょに海外へ出たというところが、中国でも評価されたんです。「海外に出るんだったら、やはりコンソールを意識しないとダメなんだね」と判断されるようになったようです。「コンソールゲームで海外ということだったら、ソニーといっしょに行くというのはアリなんだな」と思っていただけた。サクセスストーリーが生まれたので、今回のChina Hero Project第3期募集も、さらに注目が集まっているところです。

――つまり、『原神』によってChina Hero Projectに対する注目度がさらに上がったということですか?

江口そうなんです。miHoyoは、『崩壊3rd』というモバイルゲームでスマッシュヒットを飛ばした会社で、もともと実力はありましたし、China Hero Projectとは別のところで、我々とは協力関係にありました。2018年の頭くらいのころから『原神』のプロジェクトの話はうかがっていて、「コンソール版を出しましょう」という話をしていたんです。

 彼らは、パッションに溢れた、「自分たちが作りたいものを作りたい!」というピュアな人たちの集まりなんですよ。「コンソール!? どうやるの?」みたいな感じでした(笑)。そんな彼らに対して、コントローラーで遊ぶスタイルや大画面の表示の仕方や、それこそアメリカ人や日本人の好みといったところを我々がサポートできますよということで、何年も前から話をしてきました。アメリカや日本で、プレイステーションでヒットしたことから、『原神』が盛り上がったということで、China Hero Projectも注目していただいているんですね。

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『原神』
『原神』PS Storeサイト

China Hero Projectでは、とにかくクオリティーを追求する

――──China Hero Projectの第3期の募集が開始されましたが、SIE上海としては、どのようなタイトルを欲しているのですか? タイトル選定にあたってこだわっているポイントはどのような点ですか?

江口実際のところ、この手の発掘プロジェクトは、中国でもけっこう実施されています。ファンドが主催したり、大きな企業が主催したり……。ただ、我々が明らかに違うと自負しているのは、“とにかくいっしょにクオリティーを重視しましょう”ということです。

 たしかにこれはビジネスなので、「売れたらいいな」ということはお互い共通の意識としてあります。私もそう思いますし、開発会社さんも最終的には売れたいという目標があるでしょう。だからといって、「いま流行りのこういったタイトルを作ろう」という押し付けはすべきではないと思っています。ジャンルも問いませんし、とにかくクオリティーを追求しましょう!と。

 我々もワールドワイドで応援していくのだったら、恥ずかしいものは出せないですし、「プレイステーションのクオリティーに見合うものを作りましょう!」ということで集めています。ですので、それに賛同してくれる開発会社さんを求めています。

――クオリティーを追求する姿勢を重視なのですね。

江口あとはパッションです。これまでさまざまなクリエイターさんと接していて実感するのは、パッションがないと、途中で頓挫してしまうことが多いということです。これは会社の大小を問わないのですが、社内で話が合わないということで、途中でうまくいかなくなるケースもままあります。それを乗り越えるためには、やはり最初のパッションやクオリティーを追求する姿勢が欠かせないのではないかと思います。

――となると、作品のアイデアがイマイチでも、パッションがあればChina Hero Projectに参加してもらうことはありえるという話ですか? それともやはりある程度はアイデアがないとダメというジャッジになるのですか?

江口もちろん、そこは慎重に判断します。パッションだけでも当然きびしいですし、ゲームシステムやコンセプトだったり、プロジェクトとしてしっかりしているところを見極めます。さらに言えば、彼らの財務状況や体制なども総合的に見ながら判断します。我々が丸抱えでやってあげるわけではないので、ちゃんとした会社かどうかというのは、大きな判断材料になりますね。

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11月に行われたChina Hero Projectのカンファレンスの模様から。

中国のゲームクリエイターが世界で評価されてきている

――実際にChina Hero Projectに参画した場合に、SIE上海からどのような支援が得られるのですか?  さきほどいろいろな支援が受けられるとおっしゃっていましたが、いちばん大切にしているポイントがあったら改めて教えてください。

江口支援には、大きく分けて3つの塊があります。ひとつはお金です。これはソフトをリリースするときにSIE上海が最終的に資金を投入することもありますが、初期の段階ではファンドを紹介するんですね。China Hero ProjectはSIE上海だけで取り組んでいるプロジェクトではなくて、我々がリードさせていただきつつも、いろいろな企業に協力してもらっていて、そこに2社、ファンドグループが入っているんです。彼らにもセレクションの投票権があったりします。そこで、「このチームはいいね」ということであれば、ファンドグループが初期の段階から投資をしていくこともあります。これがまずひとつ目の支援です。

 ふたつ目の支援は開発ツールです。さきほど申し上げたエピックゲームズさんやデジタルハーツさん、さらにはバンガードさんCRI・ミドルウェアさんも我々のパートナーに入っていただいて、彼らがセレクションの意見も出せますし、セレクションされたタイトルに対して彼らのライセンス商品を無料で提供しています。

 そして3つ目がSIE上海としての、プレイステーションとしてのサポートです。これは話が長くなってしまうのですが、とにかくいろいろなものをご提供しています。

――いろいろなものですか?

江口はい。たとえばですが、China Hero Projectでサポートすることになったチームが、最初は少人数だったものが、徐々に大きくなっていくというケースはけっこうあります。その過程で組織の問題だったり、財務や人事だったりと、いろいろな課題が持ち上がるわけですが、そういうものを含めて我々がつねに細かくタッチさせていただいているんですね。

 もちろん、PlayStation Studiosのメンバーなどが、ゲーム制作という観点からいろいろと技術的なアドバイスをしたりもします。

 そして、開発が最終段階になってくると、今度は我々のマーケティング力を発揮する出番になります。我々自身がパブリッシングすることもありますし、パブリッシャーを見つけてきたりとか……。言ってみれば、総合的な支援プログラムです。

――すごくきめ細やかなサービスというか、サポートになっていますね。至れり尽くせりというか。

江口そうなんですよ。賛同していただいている企業の皆さんには本当に感謝しています。

 正直なところ、China Hero Projectにビジネス的なリターンがすごく大きくあるかというと、それは未知数なのでわからないです。プロジェクト開始当初は、CSR(企業の社会的責任)というか、社会貢献的な側面も正直なところありました。それが、『原神』の成功によってビジネスとしても大いに可能性があるぞという形になってきています。

 China Hero Projectから出た『フィスト 紅蓮城の闇』も高い評価を得ています。China Hero Project発のタイトルが、それだけ高い評価をいただけるのは感慨深いですし、6年間かけて、しっかりとしたプロジェクトになってきたという手応えを感じています。

――『フィスト 紅蓮城の闇』のお話がでましたが、China Hero Projectのタイトルが複数リリースされて、手応えを感じているのですね?

江口はい! すごくユニークなタイトルが揃っています。作品として、だんだんとすばらしいものが出てくるようになってきたと思っています。

 一方で、我々サポートする側のノウハウも蓄積しているとも実感しています。どういうものが必要かといったことがわかるようになったんです。第3期では、新たに参加してくださった企業さんもありますし、そういう面でも充実してきました。

 さらに言えば、我々SIE自身も、ローカルのSIE上海としてのプロジェクトから、グローバルでの取り組みへと発展しています。先日の発表会ではジム・ライアンさんや吉田修平さん、ハーマン・ハルストさんがビデオメッセージを寄せてくれたのですが、SIE自体での力の入れようも、どんどん力強くなってきています。

――China Hero Projectは、SIEにとってもワールドワイドでの取り組みになっているということですね。

江口そうですね。時代がコンテンツを求めていて、『原神』などの成果もあり、「中国のゲームクリエイターにはその力があるぞ!」というふうに、海外側の意識も変わってきているという実感はあります。

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『フィスト 紅蓮城の闇』
『フィスト 紅蓮城の闇』PS Storeサイト

China Hero Projectのメンバーとはビジネスの枠を越えたところでの交流がある

――今回、第3期募集に合わせて、『Lost Soul Aside』と『Convallaria』の発売が決定しましたが、両作に期待することを教えてください。

バオ『Convallaria』はフリー・トゥ・プレイのシューティングゲームです。中国のゲーム業界のグラフィックデザイナーとして、トップレベルにあるのが推しポイントですね。『Lost Soul Aside』は華麗なアクションを体験できて、爽快感溢れるタイトルになっています。

中国のクリエイターが世界に羽ばたく! いまSIEがワールドワイドで注力するChina Hero Projectの見果てぬ夢をキーパーソンに聞く
『Convallaria』
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『Lost Soul Aside』

――『Lost Soul Aside』は第1期のタイトルですが、満を持してのリリースという感じですね。China Hero Projectは、完成するまでに気長にサポートするというスタンスなんですね?

江口おっしゃるとおりです。じつは彼の存在こそ、China Hero Projectを立ち上げるきっかけのひとつになったんです。ヤン・ビンというクリエイターなのですが、当初『Lost Soul Aside』は、彼ひとりで作っていて、キレイなトレーラーをネットにあげて話題になっていたんですね。それが我々の目に止まって、「こんなクオリティーの絵が描けるクリエイターが中国にもいるんだ」ということで、コンタクトを取って実際に会ってみると、ものすごく若くて寡黙な青年だったんです。とはいえ、腕はすごい。この人をちょっと応援してみたいなというような気持ちにさせるようなクリエイターでした。

 最初は個人でゲームを作っていたのが、いつしかチームになり、それがUltizero Gamesという会社になり……ということで、『Lost Soul Aside』の開発を継続しています。先日の発表会に合わせて新規トレーラーが公開されたのですが、スピード感があって、色や光の加減も秀逸で、「本当にセンスあるなあ、コイツ」という(笑)。

 ただ、彼らはビジネスマンではないので、そのへんは我々がしっかりサポートしてあげながら、彼が納得できるものを作れるように環境を整えて応援したいなと思っています。開発もかなり最終段階まできていまして、今回我々がグローバルにパブリッシングを担当しますというアナウンスをさせていただきました。

――第1期だと10タイトルがセレクトされていて、現状全部リリースされているわけではないと思うのですが、そのへんは気長にサポートする感じなのですか?

江口そうですね。ほぼすべてのタイトルがプロジェクトとして続いています。進捗の度合いの差はありますが、クリエイターさんのペースにお任せしています。ですので、「ここまでに発売してもらわないと困る」といったことは一切なくて、「いいものを作ってほしい」「応援するよ」という感じです。

 当然我々としても、「いまグローバルでタイトルが少ないから、このタイミングがチャンスなのでは?」といったアドバイスはしますが、判断は彼らにゆだねていて、強制は一切するものではないです。逆に、コロナ禍のときは、「安全第一でやるべきだ」といったアドバイスをしたりもしましたね。

――ああ、コロナ禍ですものね。

江口コロナ禍と言えば、これはまったくの余談なのですが、武漢で感染が広がって、中国で先に拡大したときにマスク不足が起きました。そこでSIEの日本のメンバーがマスクを日本から送ってくれて、中国のスタッフに提供してくれたんですね。

 それからしばらくして、今度はそれとは逆のことが起こって、日本で感染が拡大してマスクが足りないという話になったんです。そのときに、China Hero Projectのメンバーが、みんなでお金を出し合って、マスクを売っているところを探してきてくれて、日本のSIEにマスクを送ってくれたんですよ。あのとき探すのは本当にたいへんだったと思うのですが……。China Hero Projectのロゴが印刷された紙をダンボールにペタっと貼り付けていましたね(笑)。そういうこともあって、China Hero Projectのメンバーとは、ビジネスの枠を越えたところでの交流があるように思います。

――それは素敵なお話ですね。China Hero Projectは、そんなつながりのあるプロジェクトになっているということですね。

江口そうですね。

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11月に行われたChina Hero Projectのカンファレンスの模様から。

ひとつでも多くの楽しいコンテンツをユーザーに届けたい

――──そんなChina Hero Projectですが、今回第3期のタイトルを募集することにした経緯を教えてください。

江口はい。第3期をいつキックオフするかというのは、ここ2~3年ずっと考えていました。タイミングを計っていました。ひとつにはコロナの影響で稼動が難しい時期も長くあったので、様子を見ていたということもあります。

 それが、ちょうど2年前にSIEグループの体制が変わって、“チャイナディビジョン”というチームができ、グローバルのサポートを受けやすくなったこともあり、第3期をキックオフさせることにしました。

――どんなタイトルに応募してきてほしいと思っていますか?

江口その質問は、発表会のときに中国のメディアさんからもいただきました(笑)。そこでの返答とまったく同じお返事をさせていただくと、「とくにありません」。あらゆるジャンルのあらゆるスタイル、あらゆる遊びかたのゲームに応募してきてほしいと思っています。ここで私が何か言うと、彼らの発想力や想像力にキャップをかけてしまうところもあるかなと思いますし、とにかく発想の豊かなタイトルをお待ちしています。

――選定作業はどのような感じになるのですか?

江口すでに発表会の直後から応募が入り始めているのですが、まずはできれば春、遅くとも夏まえには10タイトルくらいセレクトしたいと思っています。そこからファンの皆さんに第3期タイトルを発表して、進捗などを適宜披露していきたいと考えています。

――最後に、China Hero Projectに対する思いというか、日本のゲームファンに向けてこんなことを期待してほしいといったメッセージがありましたらお願いします。

バオいま中国国内では、コンソールゲームのチームのクリエイターがどんどん進化してレベルアップしています。そんな彼らをSIE上海のサポートを通して世界のステージに連れていきたいです。なるべく彼らの能力を発揮させたいです。最終的な目標は日本を含む、すべてのユーザーにいいゲームを届けることです。そのためにも、China Hero Projectの意義はあるのかなと思っています。

江口SIEでは、“Play Has No Limits”というスローガンを掲げています。日本語にすると“遊びの限界を超える”ですね。私たちはそのコンセプトでビジネスを展開しているのですが、いろいろな国のいろいろなコンテンツにぜひ触れていただいて、気に入ってくれたら遊んでいただきたいと思っています。優秀なクリエイターや熱意のあるクリエイターを応援して、そのクリエイターが作ったものをプレイヤーの皆さんにお届けするというのは、SIEの企業理念でもあります。

 China Hero Projectはそんな企業理念に則ったプロジェクトです。皆さんに、ひとつでも多くの楽しいコンテンツを届けたいという思いで展開していますので、目に留まったタイトルがあったら、ぜひ手に取っていただいて、プレイしていただけたらうれしいです。

中国のクリエイターが世界に羽ばたく! いまSIEがワールドワイドで注力するChina Hero Projectの見果てぬ夢をキーパーソンに聞く

 中国人クリエイターのポテンシャルを披露すべく、グローバルも視野に入れて大々的に展開されるChina Hero Project。どのようなタイトルが出てくるのか、楽しみにしたい。最後に、第3期募集時の発表会で公開された、SIE 社長兼CEOのジム・ライアン氏、インディーズ イニシアチブ代表の吉田修平氏、PlayStation Studios 統括責任者のハーマン・ハルスト氏のビデオメッセージのコメントをご紹介して、本稿を締めさせていただこう。

SIE 社長兼CEOのジム・ライアン氏

 みなさんこんにちは、ソニー・インタラクティブエンタテインメント社長兼CEOのジム・ライアンです。皆様には日頃よりプレイステーションをご愛顧いただいていることに感謝申し上げるとともに、本日、成都で開催するカンファレンスにお越しいただいたことを歓迎いたします。

 全世界で、月間アクティブユーザー数1億2000万人以上、PlayStation Plusユーザー数4500万人以上と、プレイステーションは力強い成長を維持しています。

 2021年5月に、私たちは中国版プレイステーション5の発売に成功しました。そして中国市場は強い需要があることを示し、私たちはこれまでに今年(2022年)5月の時点で67万台の出荷を果たしました。このすべてを、今日の出席者全員で実現したこととも言えるので、改めて皆様に今後ともよろしくお願い申し上げます。

 本日のカンファレンスでは、中国開発者専用に構築したもっとも重要なプロジェクトのひとつであるChina Hero Projectを中心にご紹介いたします。プレイステーションは、中国の開発者には大きな可能性を秘めていることを強く信じ、彼らとともに探求し、次世代に向けた素晴らしいゲームを作っていきたいと思います。

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SIE インディーズ イニシアチブ代表の吉田修平氏

 こんにちは、プレイステーションのインディーゲーム部門の責任者の吉田修平です。

 私は長年、中国のゲーム開発者の成長を、とくにChina Hero Projectを通して見てきました。 ここ数年、中国の開発チームとその優秀なスタッフたちが、知識と経験の面で急速に成長し、世界中で大きな成果を上げているのを目の当たりにしています。

 『ハードコア・メカ』『フィスト 紅蓮城の闇』『ANNO: Mutationem アノー:ミューテーショネム』『Boundary』『Convallaria』などChina Hero Projectから生まれたすばらしいゲームに、私はとても感動しています。 これらのハイクオリティーなゲームを見ると、中国の開発者たちは世界のゲーム業界を驚かせる存在であり、今後もそうであろうと確信しています。

 この度、China Hero Projectの第3シーズンが本日開始されたことを嬉しく思います。今後、世界中のファンの皆様に、さらなる驚きとすばらしい体験をもたらすゲームが数多く登場すると確信しています。プレイステーションは、いままでと変わらずに中国の次世代の才能ある開発チームを支援し、応援していきたいと思います。

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SIE PlayStation Studios 統括責任者 ハーマン・ハルスト氏

 みなさんこんにちは、PlayStation Studiosの責任者のハーマン・ハルストと申します。China Hero Project新シーズンの発表会に参加できることをたいへん嬉しく思っています。

 PlayStation Studiosは、『ラチェット&クランク』から『ホライゾン』、『グランツーリスモ』、『ゴッド・オブ・ウォー』など、世界中のユーザーの皆様にハイクオリティーなゲームの数々をお届けしてまいりました。私たちは、革新的で卓越した体験でユーザーの皆様を興奮させてきました。

 私はここ数年、中国の開発者コミュニティの発展を非常に興味深く注目してきました。 中国の開発者の方々は、今後ますます活躍の場を広げ、世界中のプレイステーションユーザーの皆様に、ワクワクするようなゲーム体験を提供してくれると確信しています。

 本日、PlayStation Studiosが、今シーズンのChina Hero Projectに選ばれたすべての開発者たちの強力なパートナーになることを発表できることを嬉しく思っています。 各作品の開発において、PlayStation Studiosは、プロジェクトに参加するすべての作品が最大限の可能性を発揮できるよう、指導、助言、実際的なサポートを提供いたします。

 PlayStation Studiosが中国の次世代開発者たちの助力になることを期待していますし、China Hero Projectに選ばれたチームがどんなエキサイティングなゲームを生み出してくれるのか、ワクワクと楽しんでいます。

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