ミニチュアで作られたストップモーションアニメのような質感の映像の洪水が立て続けに流れ、そこに子供の頃の記憶について語るモノローグが重なる。わかるようでわからない、懐かしいようで未体験の何か。『Dome-King Cabbage』は白昼夢のような不思議な体験だ。

 今月はじめにロサンゼルスで行われたインディーゲームイベント“Day of the Devs”で本作の日本語版デモを遊んできたので、その内容を紹介しよう。ゲームはインディーパブリッシャーのHYPER REALからPCとSwitchでのリリースが予定されている。

 “ビジュアルノベル”を自称する本作だが、一般的なゲームジャンルとしてのそれとはかけ離れている。文字通り“視覚的な”(ビジュアル)小説(ノベル)として作られたインタラクティブ作品なのだ。

 しかもその内容は超現実的でつかみどころがない。たとえばプレイヤーに語りかけてくるゆるキャラのような存在がいるのだが、彼(?)はどうやら別宇宙からの高位存在のようなものらしく、アドベンチャーゲーム的に問うてくる質問もなかなか要領を得ないもの。これは恐らく、アーティスティックなイメージの洪水から物語やある種の感覚などを体感していくタイプの作品なのだろう。

Dome-King Cabbage
Dome-King Cabbage

 しかし妙に惹き込まれるものがあるし、雰囲気だけで終わってしまいがちなこの手の作品にはなかなかない謎の説得力もある。それはCGアーティストである本作のメインクリエイターのCobysoft Joeの繰り出すビジュアルの賜物だ。

 実はミニチュア撮影に見える部分もすべてCGで作られており、時にポップに、時にサイケデリックにめくるめくような映像美を見せてくれる。ちなみにこうした映像中心に進んでいく作品ということもあって、完成版は2~2.5時間ぐらいの内容を予定しているらしい。

Dome-King Cabbage

 本作のもうひとつの鍵となりそうなのが、ポケモンやデジモンのようなモンスター収集RPGの要素だ。このパートはゲーム内ゲームとして収録されていて、わざわざプレイステーション3風のOS画面から“起動”してプレイすることとなる。

 デモでは「主人公の少女が3体のモンスターから1体を選び、試験をクリアーして冒険の旅に出る」というベタなオープニングをプレイできたのだが、これもまた作者のゲーム体験の記憶などに紐づいたメタ的なストーリーテリングの一部になっているんじゃないかと思う。

Dome-King Cabbage
Dome-King Cabbage

 さて、本作のここから先の物語がどうなっていくのか(たとえばもっとゲーム的なものになるのか?)はわからない。しかしトレイラーの謎だらけの美しいビジュアルの洪水を見て気になった人はウィッシュリストなどでフォローしておくといいんじゃないだろうか。恐らく万人向けのものにはならないだろうが、こんな作品はそうないからだ。