2024年2月24日にサービスインから3周年を迎えるゲーム『ウマ娘 プリティーダービー』(iOS、Android、PC)。3周年を目前に放送された公式番組“ぱかライブTV Vol.38 3周年記念 ハッピーウィンターフェス!”にて、オルフェーヴルが同作に登場することが明かされた。

 それを記念し、競走馬オルフェーヴルの主戦を務めた池添謙一騎手に、ウマ娘と競走馬のオルフェーヴルについて語ってもらった。

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『ウマ娘』ついに登場のオルフェーヴルを池添謙一騎手が語る。「(三冠では)能力を引き出せれば負ける相手はいないと思っていた」

池添謙一(いけぞえけんいち)

1979年7月23日生まれ、滋賀県出身。1998年3月に鶴留明雄厩舎より騎手デビュー(2001年よりフリー)。大舞台に強く、数々の個性派とタッグを組んで積み重ねたGI級レースの通算勝利数は28を数える(2月6日現在)。

GIレースに出る馬の中でも、頭ふたつみっつ抜けていた

――池添騎手はX(旧Twitter)などでも『ウマ娘』について触れられていますが、初めて『ウマ娘』を知ったときのことを覚えていらっしゃいますか?

池添僕はマンガを読むのが好きなので『ウマ娘 シンデレラグレイ』で知りました。史実の競走馬の戦績はもちろん、レース前後のやり取りなどもかなり忠実に再現されているのがおもしろいですよね。

――そんな『ウマ娘』に今回、ついにオルフェーヴルが登場することになります。テレビアニメ第3期で名前が出るなどファンから待望されていたウマ娘ですが、彼女のビジュアルを見て、いかがですか?

『ウマ娘』ついに登場のオルフェーヴルを池添謙一騎手が語る。「(三冠では)能力を引き出せれば負ける相手はいないと思っていた」
『ウマ娘』ついに登場のオルフェーヴルを池添謙一騎手が語る。「(三冠では)能力を引き出せれば負ける相手はいないと思っていた」
オルフェーヴル(声:日笠陽子)

池添すごく凝ったイラストですよね。茶色っぽい髪の毛なのは、馬のオルフェーヴルが栗毛だからかな。

――金の装飾が施されているのも印象的です。

池添これ、多分名前から来ていますよね。オルフェーヴルが“金細工師”という意味なので。

――確かに。勝負服の袖などは、競走馬の勝負服のデザインがもとになっているのかもしれません。

池添本当だ。髪型がセンター分けで色が違うのも意味がありそうですよね。

――馬のオルフェーヴルの前髪と流星の色を組み合わせたものに見えます。あとは馬のオルフェーヴルの愛称である“暴君”のイメージを反映して君主っぽい雰囲気がありますね。

池添うん、カッコいいと思います。オルフェーヴルは、最初はカード(サポートカード)として登場するんですよね?

――そうですね。育成ウマ娘として登場するのはもう少し先になるのではないでしょうか。

池添なるほど。どんなキャラクターになるのか楽しみです。

――ウマ娘のオルフェーヴルは、口調や立ち居振る舞いが王様のようなキャラクターだそうですが、サラブレッドのオルフェーヴルはどんな性格でしたか?

池添兄のドリームジャーニーと同じで、勝ち気でしたね。ドリームジャーニーとは走りかたは似ていますが、体格はオルフェーヴルのほうがひと回り大きかったです。とくに顔が大きかったですね(笑)。

――性格がヤンチャというのはよく聞きますが、ずっとそうだったのでしょうか?

池添2歳時などはとくにすごかったですね。新馬戦ではゴール後に振り落とされてしまいましたし、2戦目(芙蓉ステークス)は、結果こそ2着に入ったのですが、ゲートの中でずっといなないていたり、たいへんでした。3戦目(京王杯2歳ステークス)はさらにスタート直後、内ラチに突っ込んでいこうとしていました。

 マジメな性格ではあるんですよ。あの馬のスタイルでレースができれば負けませんでした。ただ、集中力が切れてしまうと突飛な行動に走ってしまうというか。だから、乗っているあいだは油断できなかったですね。

――調教のときも手こずっていたのでしょうか?

池添調教はマジメにこなしていました。と言っても、僕が調教で乗るのは追い切りだけで、ふだんは担当の森澤さん(森澤光晴調教助手)が自立心を養いながらお世話をしてくれていて。本当にたいへんだったと思いますね。ほかにも牧場のスタッフの方だとか、いろいろな人が作り上げてくれていたので、乗り手としてとても感謝しています。

――オルフェーヴルとのコンビはご自身初のダービー制覇、そして三冠を達成したということで、やはり思い入れも強いのではないでしょうか?

池添何と言ってもダービーは別格です。ダービーで“1番人気で”勝つことは、ジョッキーにとって最高の栄誉ですから。皐月賞でそれを意識して、ダービーを勝った後は三冠確実と見られ、三冠を獲ってからも三冠馬として“負けてはいけない”というプレッシャーが出てきて……。

 オルフェーヴルが引退するまで、プレッシャーはきつかったですね。レースの日を待ち望みつつも、一方でその日が来てほしくないと思う自分がいました。

――乗りたくない、と思うときも?

池添いえ、騎手なのでそれはないです(笑)。ただ、オルフェーヴルが負ける姿は想像できなかったのですが、それだけに「負けたらどうしよう」と形のない不安が出てきて、という感じでした。

――三冠に挑む際に、警戒していた相手はいたのでしょうか?

池添あまりライバルと捉えていた馬はいませんでした。僕が能力を発揮させてあげさえすれば、誰が相手でも勝てると思っていました。

――菊花賞では、三冠達成後にまた振り落とされてしまうということもありましたね。

池添じつはダービーでもその動きをしていたんです。ゴール後に向正面まで流して走らせるのですが、そこで外ラチに向かって突っ込もうとしていました。そのときは何とか未遂に終わりましたが……。まわりに馬がいなくなって1頭になると、そういう動きをしようとするんです。

――4歳春の阪神大賞典では、一度レースをやめようとしてスピードをかなり緩め、再び走り出して2着に食い込むという驚きの走りもありました。

池添池江先生(オルフェーヴルを管理していた池江泰寿調教師)もインタビューなどで言っていますが、あのレースでは先生から「先行してほしい」という注文があったんです。

 それでいつもと変えて前目につけたら、ずっと逃げようと力んでしまいました。だから、抑えようとしてずーっと手綱を引いていたんですが、もう腕がパンパンになってしまって。やっぱり、1馬力は人間の力じゃ制御できないんです(笑)。

 逃げ馬がいなかったのも悪い方向に出てしまいましたね。2周目の1コーナーで何とか戻していたんですが、3コーナーでとうとう吹っ飛んでいってしまいました。

――私もあのレースを見ていましたが、ファンとしては「負けて強し」と感じました。

池添まるでマンガのような出来事でしたね。

――オルフェーヴルには引退してからもよく会いに行かれているそうですね。

池添オルフェーヴルとドリームジャーニーにはいまでも毎年会いに行っています。デュランダルは、亡くなってからはお墓参りになりましたが、この3頭は毎年ですね。自分が乗っていた馬に会いに行くのが好きなんです。「いまどうやって過ごしているのかな」とか考えながら。亡くなった馬のところにも、機会を見つけて手を合わせに行っています。

――今回、オルフェーヴルが『ウマ娘』に登場するわけですが、池添騎手がウマ娘のオルフェーヴルの能力をつけるとしたら、どうなるでしょう?

池添いちばん得意な距離は2000メートルとか2400メートルだと思います。脚質は差しかな。優れていたのは、スピードはもちろんですが、スタミナも無尽蔵にありましたね。能力も高く、GIレースにはすごい馬が集まっているのですが、その中でも頭ふたつみっつは抜けていました。

――ウマ娘たちには“固有スキル”という、レース中に順位など特定の条件を満たすことで発動できる能力があります。こちらについてはいかがでしょう?

池添特定の条件というのはあまり思いつかないですね。基本的には自分の形なら、どんなときでも力を発揮できる馬でした。

――ウマ娘のオルフェーヴルがどんな能力になるのか、育成ウマ娘としての登場が待ち遠しいですね。

池添そうですね。『ウマ娘』のゲームはこれまでプレイしてこなかったですが、やってみたくなりました(笑)。『ウマ娘』は3周年を迎えてますます人気の高い作品で、その中でオルフェーヴルが登場すると聞き、改めてビックリしています。自分が乗せてもらって思い入れがある馬なので、それがキャラクターになるのは楽しみです。皆さんもぜひ楽しんでもらえたらと思います。

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週刊ファミ通ではスイープトウショウ&カレンチャンについてインタビュー

 現在発売中の週刊ファミ通2024年3月7日号(2024年2月22日発売、通巻1838号)にも、池添騎手のインタビューを掲載。こちらでは『ウマ娘』のメインシナリオやスイープトウショウの育成シナリオをプレイしながら本作について語ってもらった。ぜひチェックを!

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