武蔵野市・吉祥寺に密着したインディーゲームイベントTOKYO INDIE GAMES SUMMIT 2024が、昨年に続き今年も20204年3月2日(土)、3日(日)に開催される。同イベントに対する思いを、イベントを主催する武蔵野市の担当である北村拓也氏とPhoenixxの川村梓氏に聞いた。

TOKYO INIDIE GAMES SUMMIT2024開催直前インタビュー。武蔵野市・吉祥寺地域密着型インディーゲームイベントはさらに進化する

川村梓氏(かわむらあずさ・写真左)

Phoenixx
(文中は川村)

北村拓也氏(きたむらたくや・写真右)

武蔵野市
市民部 産業振興課 産業振興係 まちの魅力向上担当係長
(文中は北村)

TOKYO INDIE GAMES SUMMIT 2024

  • 開催日時:3月2日(土)、3日(日)※2日はビジネスデイ
  • 入場料:ビジネスデイ/3000円[税込]、一般公開日/1000円[税込]※小学生以下無料(保護者同伴が必要)
  • メイン会場:武蔵野公会堂、吉祥寺東急REIホテル
  • サブ会場:吉祥寺PARCO、吉祥寺マルイ、キラリナ京王吉祥寺、デジタルハリウッドSTUDIO吉祥寺、ハモニカ横丁 吉祥寺
TOKYO INDIE GAMES SUMMIT 2024公式サイト

街を挙げてのインディーゲームのイベントに!

――今年もTOKYO INDIE GAMES SUMMIT(以下、TIGS)が開催されます。改めてTIGSが企画された経緯を教えてください。

川村吉祥寺はエンタメコンテンツの宝庫のような街です。アニメスタジオがたくさんありますし、アーティストさんやマンガ家さんもたくさん住んでいる。ゲームの会社もけっこうあるんです。私たちは吉祥寺にオフィスを構えていて、愛着もあります。そんな吉祥寺を拠点としたインディーゲームイベントを開催したいというのがそもそものきっかけですね。

 一方で、海外で開催されている街を挙げてのイベントにもすごく憧れがあったんですね。海外で言えば代表格は“サウス・バイ・サウス・ウエスト”(※)で、社長の坂本(和則氏)が参加しているのですが、オースティンという街を挙げてのイベントの熱量がすごいらしいんです。吉祥寺という街とそういったイベントができたらと思い、それで、武蔵野市さんにご相談したところ、着々と話が進んでいきました。

※サウス・バイ・サウス・ウエスト……毎年3月にアメリカ・テキサス州オースティンで開催される、音楽祭、映画祭、インタラクティブフェスティバルなどを組み合わせた大規模イベント。

――その趣旨に武蔵野市も賛同したということですね。

北村お話をいただいたときは、お恥ずかしながらインディーゲームという言葉がピンとこない状態でした。そこで「インディーゲームとは何か?」みたいなところから勉強させていただきました。「あ、このタイトルは知っているな」というのもけっこうあったりしました。そこで、武蔵野市の産業振興のためにごいっしょさせていただくことになりました。

 吉祥寺では、マンガやアニメの取り組みはありましたが、ゲームはまったく新しい取り組みだったんですね。その点でチャレンジ要素は強かったかなと思いますが、産業振興課には「どんどんやっていこう」という気風もありまして、話は進んでいきました。

――アグレッシブな気風があるのですね(笑)。

北村もともと吉祥寺は、井の頭線と中央線・総武線がぶつかるところで、アクセスも非常によく、マンガ家さんやアニメ制作会社など、クリエイターさんが集まりやすい土地柄という認識があります。住むもよし、遊ぶもよしという街ですね。クリエイターさんの集まる街として発展させたいという思いはありますね。

――ちなみに、北村さんはゲームはお好きなのですか?

北村人気作はひと通りプレイしていますね。ただ、インディーゲームはそこまで詳しくはなくて、「こういうのがインディーゲーム」なんだなということで、いま少しずつ勉強している感じです。

――1回目を実施するにあたっては、話はすんなりと進んでいったのですか?

北村先ほどお話ししました通り、インディーゲームのイベントというのはいままで前例がなかったので、それを市が応援する意義に関しては、すごく議論を重ねました。全国で開催されているほかのインディーゲームのイベントの実例なども交えて、「こういうポテンシャルのあるイベントです」ということを説明して、市として関わる意義を整理して実施にこぎつけたという感じですかね。

――昨年1回目を実施してみての手応えはいかがでしたか?

川村まず、予想よりもかなりの方に来ていただけたのがうれしかったです。当初自分たちが想定したよりも倍近くの方にお越しいただけて、本当に感激しました。お越しいただいた方に、イベントの熱気を感じとっていただけたのではないかと思いました。「西東京エリアに住んでいるので、吉祥寺で開催してくれてよかった」みたいな声もうかがって、ほっこりしました(笑)。吉祥寺にお住まいのマンガ家さんだったりアニメーターさんで、ふらっと立ち寄ってくださった方もいらしたようです。そういう意味では、“別の才能を持った方々が出会う場所”になれたのかなと。

――吉祥寺で開催したことのよさが改めて実感できたのですね。

川村あと、お子さんが多かったことも特徴的だなと思いました。吉祥寺はご家族連れが多い街なんですよ。井の頭公園も近くにありますし。お子さんがすごく多いイベントということで、クリエイターの皆様にはすごく喜んでいただきました。

――クリエイターさんからの印象的なフィードバックはありましたか?

川村学校の文化祭みたいだという印象を持たれた方は多かったみたいです。私たちも武蔵野市公会堂に初めて入ったときにはそう思いました。レトロな壁の感じも素敵ですよね。ああいった歴史のある場所でサイバーなデジタルゲームが(アナログゲームもありますが)展示されているというギャップがよかったです(笑)。

北村1回目に関しては、実施してみるまで、どうなるかまったく予測できない状態でした。正直、人が来てくれるのかなという不安もありました。それが、吉祥寺公会堂で行うイベントとしては過去最大の人数を記録したんです。公会堂は60年の歴史を持つのですが、過去最高です。「こんなに来てくれるのか」とすごくびっくりしました。「やってよかった」と素直に思いました。

 あと、地域の皆さんの反応も印象的でした。これまで吉祥寺ではマンガやアニメというコンテンツをテーマにして街の活性化に取り組むということはずっと議論してきたのですが、ゲームに関してはあまり議題にも上ってこなかったんですね。それが「ゲームってこんなにもポテンシャルがあるのか」と、すごく衝撃を受けていらっしゃいましたね。

川村個人でゲームを作っているクリエイターってこんなにたくさんいるんだ……とびっくりされたかもしれませんね(笑)。

TOKYO INIDIE GAMES SUMMIT2024開催直前インタビュー。武蔵野市・吉祥寺地域密着型インディーゲームイベントはさらに進化する
60年の歴史を持つ武蔵野市公会堂において、過去最高の入場者数を記録したとのこと。

――それにしても、吉祥寺公会堂で過去最高の人数を集めたというのはすごいですね。

北村駅チカというのもあったとは思うのですが、Phoenixxさんがいろいろなチャネルを使ってイベントのことを発信してくださったので、それはとても大きかったと思います。市役所だけでやっていたら、あんなたくさんの方は絶対に来なかったです。

川村逆に、私たちから見たら、市のご協力がなかったら実現できなかったということがたくさんあります。街中にポスターを貼るということはその一例ですが、とくに吉祥寺というエリアにイベントの情報や意義を届けるというところでは市役所の皆さんにすごく助けていただいています。だからこそ、「街を挙げてTIGSを盛り上げていこう」という雰囲気になったのだと思います。

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昨年行われたTOKYO INDIE GAMES SUMMIT 2023の模様。

――すばらしい相乗効果だったと言えそうですね。そんな1回目の成功を受けて、今年のTIGSはどのようなものになるのですか?

川村昨年のイベントを踏襲して、クリエイターの皆さんが集まって交流できる場所にし続けるというコンセプトは継続しつつ、運営側としてはストレスなく楽しんでいただきたいと思っています。盛り上がり感はそのままに、より快適なイベントを目指すというのが内々のテーマですね。昨年の開催日は3月にしてはすごいポカポカ陽気で、会場は物理的な意味でもすごい熱気だったんですね。そこはぜひとも改善したいと強く思っています。

北村1回目は来場してくださった方が本当に多くて、事故がなくてよかったと思ったのですが、2回目の開催にあたっては、とにかく事故のリスクをなくすのが大きな課題だという認識でいます。そのうえで、さらなる街の活性化を目指したいというのはあります。今回、地域の大型店さんにも協力していただけることになったので、さらに街を挙げてのイベントとして、盛り上げていきたいですね。

川村1回目の成功を受けて、ありがたいことにたくさんの出展希望をいただき、武蔵野公会堂だけでの実施では、キャパシティー的に無理だというのは、けっこう早い段階からわかっていたんですね。場所を物理的に増やすか、時間を増やすかしないと、より快適にイベントの運営ができない。

 開催を2日間にしたのはその一環なのですが(3月2日はビジネスデイ)、場所に関しては、今年は、公会堂に加えて、吉祥寺東急REIホテルの宴会場もメイン会場になります。それに加えて、吉祥寺にあるPARCOさんやマルイさん、駅ナカのキラリナさんといった大型商業施設の皆様も、サブ会場として場所を貸してくださることになっていまして、“サウス・バイ・サウス・ウエスト”のような感じで、街のいろいろなところにTIGSのコンテンツがあるという状態を、今年トライしたいと思っています。

――まさに街を挙げての取り組みになっていますね。

北村イベントというお祭りだけで終わってしまうのはすごくもったいないと思っていまして、将来的には吉祥寺駅周辺の商店街とも連携したりして、街ぐるみでイベントを応援したいと思っています。前回は1会場での開催でしたが、それが複数になることで、点が面になるといった吉祥寺の使いかたができればいいのかなと考えています。

川村3月2日、3日は、いろいろなところでTIGSの“のぼり”が立っているのではないかなと思います。

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――今回出展は何タイトルになるのですか?

川村なんと130タイトルを超えました……! 招待タイトルと応募作品、スポンサーさんのタイトルがハイブリッドな感じになっています。想定よりもたくさんのクリエイターさんに応募いただきました。

――応募作のセレクトの基準はなんですか?

川村私たちもゲームイベントによく行くのですが、そういったイベントであまり見たことがないタイトルとか、「これ触ってみたい」と思うものは、海外クリエイターさんの作品も含めて、ひとつの基準にはしています。

――海外デベロッパーさんもいらっしゃるのですか?

川村はい。けっこういらっしゃいます。アジア圏の方はもちろんですが、ヨーロッパやアメリカ、あと、チリの方もいらっしゃいますね。昨年から今年にかけて、サテライトという形でTIGSを、gamescomやPAX、WePlay、台北ゲームショウなど、海外のいろいろなイベントに出展したんですね。そこでたくさんのインディーゲームに触れる機会があったのですが、海外にもはおもしろいインディーゲームがたくさんあって、ぜひ日本の皆さんにも遊んでほしいと思いました。

 ちなみに、先日開催された台北ゲームショウにシンガポールのクリエイターさんがいらっしゃったのですが、そのゲームが本当におもしろくて。たぶん日本のイベントにはまだ出展したことがないので、「ぜひ日本のゲームファンの皆さんに遊んでほしい」ということで、今回のTIGSに招待枠として急遽参加していただくことになったり。

――すごいスピード感ですね。なんというタイトルなのですか?

川村OWN TIME OWN TARGET』というタイトルです。Steamのページもオープンしているのですが、とてもおもしろいですよ。クリエイターはシンガポールのNo Average Joeというチームなのですが、イベントにはリモートで参加してくださることになっています。

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――今回のTIGSで、とくに注目してほしい点はありますか?

川村ステージイベントが増えました! 音楽やアニメ、マンガなどゲーム以外のカルチャーの方々とのコラボレーションも、今年は意識しています。『東方Project』のZUNさんと野田クリスタルさんとの対談も予定していますよ。リモート出展も含めて、海外クリエイターさんの参加も増えていまして、会場では、バラエティーに富んだ見たことがないゲームがいっぱい遊べると思います。

――北村さん的にはいかがですか?

北村今回メイン会場があってサブ会場がいくつも点在する……というイベントの開催方式は私たちとしては新しい取り組みなんですね。従来は、おおむね1会場で開くというのが基本で、街を歩きながらイベント楽しむというのは、初の試みです。ですので、果たしてそれがうまくいくのかなという不安もありつつ、イベントを通して街を歩いていただけたら……と思っています。そこがいちばんの推しポイントですね。

川村さまざまな会場に足を運んでほしいので、今回は各会場を回るスタンプラリーを実施します。各スポンサー様にご協力いただいた素敵な商品がプレゼントされたり。また、前回同様ハモニカ横丁の皆さんにもご協力いただいていまして、TIGSに入場された方にはドリンクチケットを提供します。イベントを17時まで楽しんでいただいて、そのあとは吉祥寺にたくさんあるおいしいご飯屋さんでみんなで盛り上がって帰ってほしいなと思います!

――最後に、TIGS開催に向けての抱負をお願いします。

北村TIGSが吉祥寺で実施していることをご存じでない方も多いと思うのですが、毎年開催していくことで徐々に定着していくのだと期待しています。TIGSと言えば、「ああ、吉祥寺で行われているイベントですね」と認知していただけるように、一歩一歩がんばっていきたいです。

川村今年のTIGSは、回遊型にしたり2日間開催にするなど、いろいろと新たなことにチャレンジしています。自分たちとしては、ただただベストを尽くすしかないと思っているので、とにかくベストを尽くして、ご来場いただけるユーザーさん、そして参加していただけるクリエイターさんに喜んでいただけるようなものにするべくがんばります!

地域全体が盛り上がるイベントに 武蔵野市市長・小美濃安弘氏

TOKYO INIDIE GAMES SUMMIT2024開催直前インタビュー。武蔵野市・吉祥寺地域密着型インディーゲームイベントはさらに進化する

 TIGSは、いままでにないという点で、市としてもチャレンジした取り組みでしたが、結果的に公会堂でのイベントとしては過去最多の来場者数となり、初回としては十分な成果だったのではないでしょうか。

 今回は2回目ということで、昨年よりよいものにという思いはもちろんあります。地域が盛り上がってこそなので、地域全体が盛り上がるイベントへと育てていきたいです。単なるお祭りで終わらせず、商店街や大型店などとともに、地域全体が盛り上がれるように、このイベントと地域をつなげる役割が我々の責務だと思っています。加えて、来場者や出展者の皆さんにとって、よりよいイベントになるようなサポートを続けていき、インバウンドにも訴求するイベントになっていくことを期待しています。

 今回は、公会堂だけではなく、吉祥寺の大型店とも連携して会場をいくつもご用意しています。ゆっくりと、たっぷりと楽しんでいただけたらと思います。このイベントが、吉祥寺に足を運んでいただくきっかけになれば幸いです。