2024年2月1日に発売されたプレイステーション5、プレイステーション4、PC(Steam)用ソフト『グランブルーファンタジー リリンク』(以下、『リリンク』)。王道ファンタジーRPG『グランブルーファンタジー』(以下、『グラブル』)を原作とするアクションRPGだ。

 『リリンク』開発のキーマンである福原哲也氏と梶泰幸氏にプレイアブルキャラクターの選考基準や、3Dグラフィックに秘められたこだわりなどを語ってもらった。

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福原 哲也 氏(ふくはら てつや)

『グランブルーファンタジー リリンク』ゼネラルディレクター。
シナリオ面、ビジュアル面、サウンド面などゲーム全体を監修。細部を手掛けるほかのスタッフと連携しつつ、『グラブル』らしさを担保できるような調整を行なった。(文中は福原)

梶 泰幸 氏(かじ やすゆき)

『グランブルーファンタジー リリンク』ディレクター。
本作のゲームシステムやバトルなど軸となるアイディアを提案、監修。本作を『グラブル』たらしめるキャラクターや世界観についても福原氏と連携しながら磨き上げた。(文中は梶)

――『リリンク』がいよいよ発売を迎えます(※インタビューは1月中旬に実施)。ユーザーの反響も大きかったですが、現在の心境は?

福原DEMO版の配信直後からいい評価をたくさんいただけたので、まずは胸をなでおろしています。『グラブル』をプレイしたことがない方にもアクションRPGとして楽しんでいただけているのはうれしいですね。

 そして、キャラクターの掛け合いだったり、グラフィックだったり、サイゲームスらしくこだわってきたところが好意的に受け入れてもらえたのはよかったです。梶がとにかくこだわってきた、キャラクターのバトルでの手触りがひとりひとり違うという部分も喜んでいただけましたし。

こちらがこだわった部分がユーザーさんにしっかり伝わったのはよかったなと思います。一方で、カメラやキーコンフィグなどのご要望をいただいている点については、しっかり目を通したうえで今後のアップデートでどう対応できるかを考えています。すべてのご要望に対応することは難しいですが、改善の見通しが立ったものに関しては、タイミングを見計らって皆さんにお伝えしていければなと。

――『リリンク』では本作で初登場となるゼーガ・グランデ空域が舞台になっています。原作『グラブル』に登場するファータ・グランデやナル・グランデといった空域の島々とは、文化や景観の面で意図的に差をつけたりはしたのでしょうか?

福原ゲーム的な流れとしてどういう島々があると体験がおもしろくなるのかを第一に考えることを優先したので、原作の舞台との視覚的な差異についてはあまり重視していないです。

 とはいえ意図的にしたこともあって、そのひとつはこの空域で最初に主人公たちが訪れるエインステッド群島や辺境の街フォルカは、ファータ・グランデ空域のポート・ブリーズに意図的に寄せています。これは最初に『グラブル』らしさを皆さんに感じてほしいというところからも来ていますし、ファンタジーRPGの序盤の舞台はまずは草原だよね、というお約束をなぞっています。

 また、星神として祀られているフラカーンに対して、風の星晶獣・ティアマトが引き合いとして出されているのも“原作における序盤と共通項がある”という演出として意図して組み込んだ部分もありますね。

原作『グラブル』に出てきた島と似たような地形や気候であっても、まったく同じデザインにならないようには気をつけました。『グラブル』らしさを感じていただきながら、違う空域であることが伝わるように意識しています。

福原差をつけるにしてもあんまり奇をてらいすぎてもよくないでしょうし……。たとえば、砂漠のエリアであれば原作にはメフォラシュなどがありますが、『リリンク』のダリ島は遠景のスケール感であったり、遺跡や遺構という要素を強く押し出したりすることで、誰が見ても“砂漠”と思える景観は保持しつつ差別化を図っています。

『グラブル リリンク』ディレクターインタビュー。『グラブル』らしさをトコトン追求したグラフィックへのこだわりや、オリジナルキャラクターの誕生秘話を訊く。

――『グラブル』では多くのキャラクターが登場しますが、『リリンク』のプレイアブルキャラクターはどういった基準で選ばれたのでしょうか。

福原ある意味で『グラブル』の顔ともなり得るというか、原作はプレイしたことがないけど、「このキャラクターは見たことがあるかも」と興味を持っていただけるような人気のキャラクター……という人選がひとつの基準です。

 この基準は格闘ゲーム『グランブルーファンタジーヴァーサス』(以下、『GBVS』)でも同様でした。それと同時に『リリンク』というアクションゲームの中で遊びの幅も考えつつ、バランスを取った結果こうなりました。

そもそも“このキャラクターがいないとダメだよね”というラインアップを考えた時点で、すでに発売時に実装できるキャパをオーバーしていました(笑)。

福原開発段階でやむなく実装を見送ったキャラクターもいっぱいいます。

原作『グラブル』では仲間になるキャラクターが数百人いますからね。『グラブル』を象徴するキャラクターを中心に、アクションゲームとしてバトルのメリハリを考慮して選んでいった結果、現在のキャラクターたちの個性やバランスが自然とできあがりました。

福原『GBVS』と狙いが共通していたので登場するキャラクターが近くなってしまいましたが、近年では『GBVS』の海外人気が高まっていたこともあり、共通のキャラクターが登場することがIPの認知という点で結果としてプラスに働いた側面もあります。また、逆に『リリンク』から『グラブル』を知った方が『GBVS』シリーズを触ってくれるキッカケにもなるかもしれませんし。

――開発の段階から海外での展開を意識した部分もあるのでしょうか?

突出して海外向けを意識して作った部分はありません。ただ、幅広い層の方に楽しんでいただけるよう、間口を広く作りたいという想いは強くありました。キャラクターごとのアクションの違いや深み、手触りの質のよさなどはユーザーのみなさんに評価いただけているのかなと思っています。

――各キャラクターを3Dモデルに落とし込むうえでこだわったポイントはありますか?

福原“2Dの『グラブル』のイラストをそのまま3Dで再現する”という明確なゴールがありました。ただ、原作は2D的な見栄えを意識したデザインが多いので、素直に3Dにするのが難しい場合もあって……。でもそこを曲げては『グラブル』である意味がないですし、いろいろな試行錯誤の末、パッと見でわからないレベルで衣装や武器に細かくアレンジを入れるなどの工夫をしています。

最初にやった大きな変更は、カタリナのマントを短くする作業でした。キャラクターデザインの皆葉英夫さんとも、どこまで短くするべきなのか話し合いましたね。そもそも3Dのアクションゲームでは処理負荷が高くなるので、マントを二重三重にひらひらさせるようなキャラクターデザインは避けるんですよね……(笑)。

 彼女は大きなマントを重ねて着用していて、なおかつ長髪をなびかせながら、腰布まで巻いている。そういったキャラクターたちが4人パーティーを組んで動くとなると、シミュレーションの難しさが尋常ではありません。『グラブル』のキャラクターの衣装には揺れるものが多くて、でも、それをなくすと『グラブル』のキャラクターではなくなってしまうということで、いかにデザインを変えずに落とし込むかという部分に苦労しました。

福原ロゼッタやゼタも髪や布など揺れものがすごく多いですが、その分すごくアクション映えするようになりました。

『グラブル リリンク』ディレクターインタビュー。『グラブル』らしさをトコトン追求したグラフィックへのこだわりや、オリジナルキャラクターの誕生秘話を訊く。

『グラブル』はイラストでも環境を表現するために風でなびいている描写が多いんですよ。『リリンク』では揺れ物が重なりあってしまうようなことが極力ないようにがんばったので、そこはぜひチェックしてほしいです。

――『グラブル』ならではの描写の特徴から来る難しさですね。

ほかに3D化するときに難しかったポイントとして挙げるならば、ライティングとハッチング(※)の表現です。キャラクターの顔に入るハイライトの表現やライティングの質感にもかなりこだわっています。ハイライトや、ハッチングのラインがミリ単位で変化するだけでも『グラブル』らしさが失われてしまうので。ハッチングはどこにどれだけ入れるのか、どれくらいの太さにするのかなど、かなり試行錯誤しました。

※ハッチング……空間や感情を表現するための表現方法。一定の面を平行な線で埋めることで影を表したり、質感を出したりする技法。

福原原作のイラストでは独特なライティングの表現をしているので、それを3Dで再現しようとするとどうしても嘘をつかなければならないんですよ。フリーカメラで嘘をつき続ける難度が高く、でもそこの絵作りを達成しないとグラブルの絵にならなかったので、長い時間をかけてこだわりました。

本来ならば影は全部真っ黒になって暗くなるのが正しいのですが、影の中にも表情がたくさんあるのが『グラブル』のイラストなんです。たとえば3Dで影にキャラクターが入ったときにハイライトが消えてしまったらそれは『グラブル』らしくないよね……とか。どこを正しく表現して、どこで嘘をつくのかという線引きは相当苦労しましたね。

――結果として、どの場面を切り取っても『グラブル』らしい画になっているのはさすがです。ここからはメインストーリーの展開についてもうかがえればと。こちらはどのような流れで制作が進んだのでしょうか。

ゲームの開発ではシナリオが最初に固まってから全体の物量が決まるので、メインストーリーの流れは開発の初期段階から完成していました。

福原今回のメインストーリーはゼーガ・グランデ空域の物語であって、原作『グラブル』とは切り離して楽しめる内容にするということは最初から決まっていました。なので、原作『グラブル』のメインストーリーの展開に合わせて発売しようみたいなことは考えていませんでしたね。

 結果的に、原作でもイスタルシアに関して盛り上がりはじめているタイミングで、『リリンク』をお届けすることができたのはよかったかなと思っています。

――メインストーリーには多くのオリジナルキャラクターも登場しますが、おふたりの中でとくに印象深いキャラクターを教えてください。

福原開発チームではマギラフリラが人気がありそうというか、限定版付属のアートブックのスタッフイラストが上がってきた時に、数が多くて驚きました。

そういう意味ではイストリアスも人気がある気がします。

福原僕個人としてはどのキャラクターにも思い入れが強くありますが、リリスは何度もデザインが変わったのが記憶に残っています。

もともとは全身黒だったり紫だったんですよね。でも、設定やイドとの対比などの要素で変わっていって。

福原『グラブル』でベリアルが登場して人気が出た時期だったのもあり、“いい悪役とは?”についてを考え直す過程で何度か設定が変わりました。

 シナリオの尺を考えると“シンプルでわかりやすい悪役”にする必要もあったので、話が一切通じず、一方的な価値観を押し付けてくる異常性などを軸に悪の教団という設定も生まれ、最終的に神々しい真っ白なビジュアルになっていきましたね。

『グラブル リリンク』ディレクターインタビュー。『グラブル』らしさをトコトン追求したグラフィックへのこだわりや、オリジナルキャラクターの誕生秘話を訊く。

バトルの側面から思い入れの深いキャラクターを挙げるなら、僕はやっぱりマギラフ リラですかね。

――武器を操るという設定も独特でした。スペリオルシリーズの武器をあんなに所持しているとは……。

福原あのプランは最初からありました。刀の“天羽々斬”も途中まで存在していたのですが、いつの間にかなくなっていました。

刀を使うと攻撃手段がほかの攻撃と被ってしまうことが理由のひとつです。それから、武器のデザインが半透明なので、ずっと常駐し続けると動作の処理的にも難しかったため泣く泣く……。

福原彼女はバトルもユニークですし、どんな評判になるか楽しみですね。石油王(※)みたいな愛称がつきそうと思っていますが(笑)。

※石油王……スペリオルシリーズがその稀少性からユーザー間での石油武器という愛称で呼ばれているため。

『グラブル リリンク』ディレクターインタビュー。『グラブル』らしさをトコトン追求したグラフィックへのこだわりや、オリジナルキャラクターの誕生秘話を訊く。

あとはガランツァも癖が強いので人気が出るかもしれませんね(笑)。バトルに関しては“こんな感じで個性を出したらわかりやすい”という要素をストレートに詰め込みました。個人的には第二形態になったら脱ぐというところも注目してほしいです(笑)。

――(笑)。イドとローランについてはいかがですか?

福原ライバルポジションでイドのようなビジュアルのキャラクターを用意したいという構想は初期段階からありました。僕が描いていたラフをもとにデザインを制作してもらったので、そういう意味ではイドに対する思い入れは強いかもしれません。その時点で武器の大剣が変形するようなギミックも考えていたので。彼のバックボーンに関するアイディアももちろんそのときからありました。

制作の途中で、「イドはライバルキャラクターとして個性が立っているのか」と立ち返った瞬間があって、そこでプレイアブルキャラクターとしてのバトルスタイルの仕様を変更したことを覚えています。

 カッコよく特徴を出すためにもイドにしかない個性を前面に出していこうということで、足してもらった設定もあったりして。メインストーリーのネタバレになるので明言は避けますが、“イドなら力に溺れずにもっともっと強くなるだろう”ということで新たなモードを足したりもしています。

福原ローランに関しては、底知れない部分はあるけれども旅を先導してくれるサポート役としてデザインされました。眼鏡をかけているのは“先生”的な知的な雰囲気を出したいというものありつつ、本音が見えづらいとかそういうイメージも込められています。発売前の段階では「絶対にこいつは裏切る」って言われていましたけど(笑)。

でも、じつは……という(笑)。

福原リリスの名前をつぶやくなど、意図的にミスリードを狙っているシーンも一部あったりはします(笑)。

『グラブル リリンク』ディレクターインタビュー。『グラブル』らしさをトコトン追求したグラフィックへのこだわりや、オリジナルキャラクターの誕生秘話を訊く。

――開発チームから初心者にオススメしたいジーンはありますか?

福原そこは“ポーション所持数”じゃないですか?

やっぱりそうですよね。あのジーンを侮ってはいけません。一部では最強のジーンではないかと噂されています(笑)。あとはこちらも定番ですが“回避性能”。連続で隙を作らずに回避できる回数が増えるので便利かなぁと。

福原Slv(スキルレベル)が高い“回避性能”をひとつ入れるだけでバトルが一気に楽になると思います。

あとは初心者に勧めるなら“ガード強化”ですかね。アクションゲームが苦手な方でもガードさえしておけば瀕死状態になりにくい仕様になっているので、そこを補強してもらえればいいかなと。

福原NPCのアルゴリズムが優秀なので、何らかのデメリットを抱えても与えるダメージをアップするようなジーンを味方に装備させるのもいいと思います。慣れないうちは味方に攻撃を任せて、自分は“自動復活”や“ガッツ”を装備するとラクになるんじゃないでしょうか。

初心者の方に勧めたいジーンはそんな感じですが、やりこみ向けに、入手が難しいジーンの中にユニークな効果を織り交ぜているので、腕に覚えがある方は独自の使い道を編み出してほしいです。

――NPCのアルゴリズムが優秀という話が出ましたが、ここまで的確に動いてくれるとさすがに優秀すぎる印象もあります。こちらは意図的なデザインでしょうか?

福原はい。NPCに足を引っ張られたらめちゃめちゃムカつくと思うので(笑)。

足を引っ張られない程度には優秀ですね(笑)。プレイヤーキャラクターを“フルアシストモード”にすると、メインストーリーをさくさく進められるというのもそういった意図があります。アクションゲームはもちろん、コンシューマーゲーム自体も触ったことがない方も『グラブル』の世界観に惹かれて触ってくれると思ったので、そこは最初からコンセプトとして固まっていました。

――メインストーリーをクリアーしたタイミングで、育成要素や攻略要素が大幅に追加されるというのも意識されていたわけですね。

福原そうですね。ゲームシステムに慣れて理解が深まってきたであろうタイミングでやれることが増えたらちょうどいいだろうと。そのタイミングで新たに戦えるボスも増えていきますし。

ゲームに慣れている方は序盤からジーンの使い道をガンガン研究するとも思いますが、慣れていない方はそこまで要求しちゃうとしんどくなってしまうのではないかと。そうするとメインストーリーに注力できなくなると思ったので、スロットの装備数も段階的に解放していくデザインにさせてもらいました。

――今後のアップデートでは超高難度クエスト“ルシファー戦”や、追加プレイアブルキャラクターとして、シエテ”や“ソーン”が配信されることが発表されています。

福原“ルシファー戦”は、エンドコンテンツとしてだいぶイイカンジの難易度だと思います。

うん、まぁ難しいですね(笑)。でも、本気でやり込んでくださった方は倒せると思うので、装備を揃えてぜひチャレンジしてほしいです。超高難易度と聞いて自分の好きなキャラクターで戦えるのか心配されるかなと思いますが、どのキャラクター、どの編成でも楽しんで戦えるようには調整していますので、ぜひ挑んでみてください。

――最後に、ユーザーの皆さんへのメッセージをお願いします。

本作はとても間口の広いゲームにできたと思っています。原作ファンの方はもちろん、『グラブル』に初めて触れる方にも楽しんでいただける作品になっていますので、ぜひ手に取っていただきたいです。アクション好きな方は、装備を極めたり、高難度クエストに挑んだり、とことんやり込んで極めていただけるとうれしいです。

福原まずは、発表から長い間、お待たせしてしまいましたが、無事お届けすることができました。オンラインでのマルチプレイが目玉のひとつではありますが、エンドコンテンツ含めシングルプレイでもじっくり楽しめますので、急いでプレイする必要はありません。ぜひ多くのプレイアブルキャラクターをまんべんなく触ってじっくり遊んでいただきたいです。気になる方はまずはDEMO版でお試しください。

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